「インフルと決めつけないで」 出典:朝日新聞電子版

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2019-02-03_191219インフルエンザが大流行し、岡山県も1月24日に警報を発令した。新しい抗インフルエンザ薬も登場し、受診や処方が増える中、倉敷中央病院感染症科の上山伸也医師は「インフルエンザと決めつけて、隠れている真の病気を見落とす危険に気を付けて」と警鐘をならす。私たちにできるインフルエンザ見極めのポイントと上手な対応法を聞いた。

受診不要の場合も
 ――インフルエンザには、抗インフルエンザ薬を使う方がいいんですか

 元々健康な成人でしたら、必要ないと思います。高価な薬を使っても熱が下がるのが1日早くなる程度です。解熱剤など対症療法だけでも、3、4日で改善します。

 ――「インフルエンザ」と自己判断していいんですか

 判断のポイントが三つあります。①家族や同僚など身近に接する人に同じような症状が出ている②せき・のどの痛み・鼻水の風邪症状が全部ある③過去にインフルエンザにかかった時の症状とほぼ同じ。この三つの条件がそろえば、インフルエンザと判断してまず間違いありません。診療の現場でも、医師はこの3条件を問診や診察で確認したらウイルス検査をしなくてもインフルエンザと診断します。

 ――3条件がそろっていたら、診療所や病院に行かなくていいんでしょうか

 乳幼児と高齢者、糖尿病やがんなど免疫力が落ちる基礎疾患がある人は、受診した方がいい。

 健康な成人なら、市販の解熱鎮痛剤と水分、栄養をとって、安静にすればいいでしょう。ただし、水や栄養が口からとれない状態だったら受診しましょう。3条件がそろわない場合も受診し、医師の指示に従いましょう。

改善なしなら再受診
 ――診察・診断を一度受けたら安心ですか

 そうとは限りません。私が以前いた病院で、こんなことがありました。インフルエンザが猛威を振るっていた時期に、40代の男性が「職場で熱とせきが出た」と会社帰りに夜間の救急外来に来ました。当直の医師は「インフルエンザかも。明日受診して下さい」といい、解熱剤を処方しました。翌日、彼は改めて来院しました。鼻水やのどの痛みはなく、簡易検査も陰性でしたが、担当した医師は流行期でもあり「インフルエンザ」と判断し抗インフルエンザ薬を出しました。さらに、彼は「しんどい」と翌日また病院に来ましたが、医師はやはりインフルエンザだと考え、強めの解熱剤を出し、家に帰しました。そして深夜、救急搬送されてきました。実は、細菌による重症肺炎でした。

 このように、流行期に発熱患者を診たら、医師でもインフルエンザと思い込むことがあるのです。

 ――そういう落とし穴にはまらないためにはどうすればいいでしょうか

 「インフルエンザでしょう」と診断されても「受診翌日の方がよりしんどい」「2、3日経っても改善しない」という場合は、真の病気が隠れている可能性があります。再受診しましょう。特に、ふらついて立てない、口から飲み食いできなくなったなどの場合は救急受診すべきです。

 高熱が出て体が痛いというインフルエンザに似た症状を出す病気には、細菌性肺炎の他、尿路感染症や胆管炎、感染性心内膜炎などがあり、治療が遅れると命に関わることもあり得ます。

 ――まだ流行は続くようですが、対策は

 ワクチンが有効です。2月中に接種すれば間に合います。発症は減り、重症化は防げます。掛け捨ての保険と考えて欲しいですね。