2014年7月アーカイブ

国内に生息するニホンウナギの体長や成長率は地域ごとに大きく異なるとの調査結果を、長崎大や東京大、水産総合研究センターなどの研究グループがまとめた。

12の水系で計6388匹のウナギを調べた初の大規模調査で、長崎大の横内一樹助教は「保全のためには、大きな川から小さな川までウナギが暮らせるさまざまな環境を整備することが重要だ」と指摘している。

グループは茨城県の涸沼(ひぬま)、静岡県の浜名湖の2湖沼と千葉県の利根川、湊川、愛知県の木曽川、高知県の仁淀川、鹿児島県の川内川など10河川で平成11~16年に捕獲された親ウナギの性別や体長などを調べた。

漁獲データが得られなかった湊川以外の2湖沼、9河川では、近年の漁獲量が1960~70年代に比べて大きく減っており、漁獲の減少が全国的な傾向であることが改めて裏付けられた。

ウナギ完全養殖の研究支援へ料理店が「募金」

「うなぎ」が名物のさいたま市で、市内のうなぎ料理店約20店で構成する「日本のうなぎを育てる会」が今月から、ニホンウナギの安定供給と保護のため、「うなぎ募金」を始めた。

募金は「独立行政法人水産総合研究センター」(横浜市)が行っている完全養殖ウナギの研究費用に充てられる。同会が関係するイベントの売上金の一部も寄付金とする予定。

会員の「うなぎ処古賀」(さいたま市桜区)店主、古賀秀喜さん(48)の提案で始まったもので、会員各店の店頭に募金箱を設置し、ゆくゆくは全国的な活動に広げていきたいとしている。

古賀さんは「研究の支援はもちろんですが、募金活動を通して、ニホンウナギのレッドリスト掲載が『うなぎが食べられなくなる』ことを意味するのではなく、『いつまでもおいしいうなぎが食べられる』ためのものであることを知ってほしい」と話している。

資源と食の文化の永続を

つまるところは、捕りすぎなのだ。資源が激減してしまったウナギのことである。

今シーズンは、養殖用のシラスウナギ(稚魚)の漁獲高が少し回復したために、かば焼きなどの価格が落ち着いた、と歓迎されている。

だが、激減傾向の中での小回復なので、本来はシラスウナギの多獲を控えるべきだったはずだ。

国際自然保護連合(IUCN)によってニホンウナギは6月に絶滅危惧種に指定されたばかりであるにもかかわらず、今夏の消費に抑制傾向はみられない。

ウナギの生活史は特殊だ。成熟した親ウナギは秋に川を下って海に出て南のマリアナ海嶺で翌年の5月ごろ産卵する。生まれた子供は黒潮に乗って、年明けの1、2月ごろ、シラスウナギとなって日本沿岸の河口に現れる。このシラスたちが親になって海に向かうのは5~10年後のことだ。

資源回復を目指すなら、まずは秋の下りウナギの捕獲をやめなければならない。この措置を厳しく講じているのは、鹿児島などの九州3県と高知県に限られ、愛知と静岡県が緩やかな対策をとっているだけだ。

次には河川シラスウナギの漁獲制限と漁獲量の把握が不可欠だ。高値が付くことや夜漁のため、暴力団などによる密漁も行われ、正確な参入資源量が分かっていないのが実態だ。

もっと言えば、日本列島におけるウナギの自然分布さえ判然としていない。東北地方や北陸地方の川や池にウナギがいても、自然の個体か、養殖に由来する個体なのか、簡単には分からない。

ニホンウナギの再生には、基礎調査からの着手が急務である。環境省が大学への委託研究で利根川など7河川での総合調査に乗り出したことを評価したい。

農林水産省も新たに成立した内水面漁業振興法に基づいて養鰻(ようまん)業の実態把握に動き出す。中国からのヨーロッパウナギの輸入で国際社会から後ろ指をさされるようなことをなくすためにも必要だ。

ウナギの減少は約40年前から目立ち始めた。気候変動に伴う海流の変化などの影響もあるだろうが、即応性のある対策は過食の抑制だ。人工の種苗生産が期待されるが、実用化には時を要する。

2014-07-23_221002_2 国土地理院(茨城県つくば市)は23日、海底噴火でできた新島と合体した小笠原諸島・西之島(東京)で、海面に出ている溶岩量が東京ドーム18杯分に相当する約2220万立方メートルに達したと発表した。無人航空機が4日に撮影した画像を分析した。
国土地理院によると、前回撮影した3月22日と比べると、標高は3メートル高い約74メートル、海面上の溶岩量は2倍になった。陸地面積は、昨年11月の噴火で新島が出現する前の約0.22平方キロから、6倍の約1.3平方キロに拡大した。
西之島と新島は昨年12月につながり、溶岩噴出による拡大が続いている。

小笠原諸島(東京)の西之島で続く噴火活動は、約40年前の前回噴火を上回る規模に達したことが東大地震研究所の分析で分かった。新たに形成された陸地面積は昨年11月の噴火当初と比べて80倍に拡大。増加率はやや低下したが、専門家は活発な活動がいつまで継続するか注目している。(黒田悠希) 2014-07-23_221031_2
西之島は昨年11月20日、噴火による新たな陸地の出現が確認された。新島は溶岩流でほぼ同心円状に拡大し、昨年末にはもともとの西之島と合体。最も高い場所の標高は70メートル以上で、昨年末の倍近くに成長した。
東大地震研の前野深(ふかし)助教らは国土地理院の地形データなどを使って、昨年11月上旬とみられる海底噴火から今年4月中旬までに噴出したマグマなどの総量を推計。その結果、噴出量は東京ドーム約20杯分に相当する2500万立方メートルで、1973年から約1年半続いた前回噴火の2400万立方メートルを上回った。
島の成長率を示す1日当たりの噴出量は、当初の10万~15万立方メートルから2~3月は30万立方メートルに増加。4月中旬は20万立方メートル程度に減ったが、一時的な変動の可能性もあり、上空から観測している海上保安庁は「噴火活動は現状ではほぼ一定」としている。
前野助教によると、4月中旬までに誕生した陸地は80万平方メートル。東京ディズニーランドの約1・5倍の広さだ。ただ、1日当たりの拡大面積は4千平方メートルでピーク時の6割に低下した。
新島は当初、前回噴火で水深が浅くなった場所に噴出物が堆積したため、陸地ができやすかった。だが周囲にいくほど水深は深く、海底が埋まりにくくなっているとみられ、海保は「面積の増え方は減ってくるのでは」としている。
前野助教は「海底噴火で始まり新島が残った火山噴火は、国内では前回の西之島と1934年の薩摩硫黄島(鹿児島県)ぐらいしか知られておらず、非常に珍しい。どのように島が成長するのか興味深い」と話す。
西之島の噴火はいつまで続くのか。マグマの供給状態によっては、突然終息する可能性もあるが、無人島で観測網がないため予測は難しい。火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東大名誉教授は「噴火活動の傾向や継続期間は現状では分からない。さらに観測が必要だ」と話している。

日本の電子産業の衰退に歯止めがかからない。自動車と並ぶ外貨の稼ぎ頭だった電子産業は、2013年に貿易収支がとうとう赤字になった。同じ2013年の国内生産金額は、約11兆円にまで縮小した。2000年に達成したピークの約26兆円の半分以下である。日本の経済成長を支えてきた電子産業は、なぜ、ここまでの事態に陥ったのか。電子立国の再興に光はあるのか。連載「電子立国は、なぜ凋落したか」では、元・日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が、政策・経済のマクロ動向、産業史、電子技術の変遷などの多面的な視点で、凋落の本当の原因を解き明かしていく。

巨大な産業が一つ、いま日本から消えようとしている。10兆円近い貿易黒字を出して外貨の稼ぎ頭だった日本電子産業、製品が売れすぎて世界中で貿易摩擦を起こしていた日本電子産業――今やそれは夢まぼろしである(図1)。

日本がバブル経済を謳歌していた1991年、6回シリーズのテレビ番組「NHKスペシャル 電子立国 日本の自叙伝」が放映された。この番組を基に、4巻の書籍『NHK電子立国 日本の自叙伝』も発行される。その上巻冒頭に「エレクトロニクス商品は自動車に次ぐ外貨の稼ぎ手」とある。

電子産業と自動車産業の貿易収支の年次推移を見てみよう(図2)。2000年ごろまでは両産業が拮抗していた。しかし21世紀に入ってからの両産業の歩みは対照的だ。自動車産業の貿易黒字は、乱高下はあるものの上昇基調で、2013年においても12兆円を確保している。一方、電子産業の貿易黒字は減少を続け、2013年には、赤字に転落した。

図2 電子産業と自動車産業の貿易収支の推移(資料: 財務省貿易統計)

図2 電子産業と自動車産業の貿易収支の推移(資料: 財務省貿易統計)

電子産業は、なぜこれほど自動車産業と差がついてしまったのか。

■ICT産業の貿易赤字額は「天然ガス」並み

電子産業のなかで貿易赤字が大きいのはコンピューター関連装置と通信機器である。2013 年の赤字額はそれぞれ、1兆6450億円と2兆870億円に達する。合計すれば赤字額は3兆7000億円を超える。

日本のICT(情報通信技術)産業は、貿易では大赤字だ。原発停止に伴い天然ガスの輸入量が増え、円安効果もあって天然ガス輸入金額が増加した。その金額は2013年で約3兆6000億円という試算がある。ICT産業の貿易赤字額3兆7000億円は、天然ガスの輸入増加金額以上ということになる。

今や消費者の多くにとって不可欠のツールとなったスマートフォン(スマホ)やタブレット端末だが、その裏にはICT産業の貿易赤字は「天然ガス」並みという知られざる事実があった。

■輸入比率が高いスマホ

貿易赤字は、一つの企業にとって、あるいは一つの国にとって、ただちに「悪」というわけではない。海外の適地に工場をつくり、そこから自社製品を輸入する。貿易収支的には赤字になるが、企業としての利益は確保できる。

海外の自社工場で作った製品を、海外市場に売り広げる。たとえば少し前には、メキシコの工場でテレビを作り、それを米国に販売することを、日本企業がよく実施していた。この場合は企業や国の貿易収支には関係がない。 いずれの場合も、企業や国の経常収支に貢献する可能性がある。

しかし最近、そのような活動によって大きな利益を上げている例は、電子産業に関する限り、あまり聞かない。たとえばスマホもタブレット端末も、輸入比率が高い。これらの輸入品を製造販売しているのは日本企業ではない。

ちなみに2013年度(2013年4月~2014年3月)の日本の貿易収支は10兆8642億円の赤字だった。赤字額は過去最大である。ICT産業の赤字3兆7000億円の影響は大きい。

NTTドコモが、次の一手として着々と準備を進めている戦略商品がある。手のひらサイズの認証端末「ポータブルSIM」がそれだ。世界で初めて開発に成功――。そんな触れ込みで6月にプレスリリースを発信した割には、白い箱型の本製品は一見地味で何がすごいのか分かりにくい。しかし自動車やテレビ、ノートパソコン、携帯型ゲーム機など、世の中のありとあらゆる機器をネット接続へといざなう壮大な構想の中核を担うものだ。ドコモの思惑はポータブルSIMによる、携帯電話業界の競争軸を変える「ゲームチェンジ」。その通りに事が運べば、携帯電話業界の未来は激変する可能性がある。

■外付けSIMカードでどんな機器もネット対応に

NTTドコモのポータブルSIM(右)。スマホなどのLTE対応機器にかざして使う(一部画像処理しています)

NTTドコモのポータブルSIM(右)。スマホなどのLTE対応機器にかざして使う(一部画像処理しています)

「スマートフォン(スマホ)から削れるものをどんどん削っていったら、こんな端末が出来上がった」。NTTドコモの照沼和明移動機開発部長は、ポータブルSIMの開発コンセプトをこう語る。彼がポケットから取り出した実機をまじまじと眺めると、大きさは名刺入れより一回り小さい。モバイルルーターに似ているが、電源ボタンと2つの発光ダイオード(LED)のインジケーターがあるだけでいったい何ができる装置なのか謎めいている。

ポータブルSIMを一言で表すなら、スマホやタブレット(多機能携帯端末)に挿してある利用者の契約情報の入ったICカード「SIMカード」を独立した別の端末に仕立て、様々な機器との連携機能を持たせたものだ。これをスマホのほか、自動車やテレビなどにかざすだけで、LTE回線で通信できるネット機器へと変身させる魔法のボックスなのだ。

もちろんかざす機器側に改修が必要になるが、「技術的なハードルはそれほど高くない」(照沼部長)という。ポータブルSIMと機器間は近距離無線通信技術である「NFC」でまずひも付け、その上でSIMカードの情報を「ブルートゥース」で送る仕組み。5~30秒ごとに認証を行うため、ポータブルSIMは機器のそばに置いておく必要がある。ネット接続はそれぞれの機器側に用意したLTEの回路が担うことになる。いずれの通信技術も成熟していることから、現在通信機能を持たない機器に組み込むことはたやすい。

ポータブルSIMにはLTEの契約情報のほか、画面やセキュリティーなどの設定情報、ウェブサイトのID/パスワード一覧などを併せて記憶させておける。対話アプリ「LINE」が電話番号でスマホ1台ずつを識別しているように、ポータブルSIMをかざした自動車やテレビなどを含め「1台の電話機」として扱われる。もちろん、ドコモ利用者がスマホで使っているドコモ独自の様々なサービスも利用可能になる。

では、どんなメリットがあるのか。照沼部長は現在の「1回線=1端末」の概念から解放されることだとする。利用者に、端末と回線を組み合わせ使い回す自由を与えるものだと胸を張る。




■端末や回線の使い回しが自在に

たとえば仕事用とプライベート用で2台のスマホを常時持ち歩いている人なら、スマホを一台に集約できる。ポータブルSIMを仕事用とプライベート用と目的に応じて複数個用意しておけば、ビジネス目的で使っていたスマホがプライベート用のポータブルSIMをかざした瞬間から私用に切り替えて使えるようになる。

出張先のホテルやネットカフェに置かれたパソコンやタブレット。こうした共有機器の利便性も向上しそうだ。デスクトップなどが使い慣れた環境でないため、借りても仕事がはかどらないことが多いが、ポータブルSIMの活用でいつものオフィスにあるパソコンのような環境で仕事ができるようになる。

ポータブルSIMの概念が国内や海外でも定着すれば、通信会社の壁を超えた端末の使い回しも夢ではなくなる。同じiPhoneでも挿すSIMカードがドコモとソフトバンクとでは受けられるサービスが異なる。同じように夫が使うときはドコモに、妻のときにはKDDIにつなぐ――。そうなれば確かに利便性は高まりそうだ。

新たな需要を開拓する余地も大きい。自動車業界は車のカーナビやセンサーをネットに常時接続する「テレマティクス」を10年以上前から推進するが、全車がネットにつながるのはまだまだ先。車専用の通信回線を契約し、通信機器を車内に設置しなければならないことが普及のネックになっている。

2台のポータブルSIMを使えば、スマホを仕事用とプライベート用に切り替えることも可能になる(一部画像処理しています)

2台のポータブルSIMを使えば、スマホを仕事用とプライベート用に切り替えることも可能になる(一部画像処理しています)

ポータブルSIMの力を借りれば、1つのLTE回線を使い回せるようになり、テレマティクス導入のハードルは一気に下がる。

ドコモの本気度は、異例の開発体制からもうかがえる。従来ドコモの製品やサービスは通常、神奈川県横須賀市にある自前の研究開発拠点で完璧に作り上げるまで門外不出だった。ところが今回は試作品の段階で発表し、ポータブルSIMの仕組みを応用したサービスのアイデアを社外から一般公募する催しを開くことを決めた。

照沼部長は「ポータブルSIMは、日本のみならず世界中に対応機器を増やさないと意味のない技術。狭い世界にとどめず、早期に構想を公開して幅広い知見を得ることで普及を図る方が得策だと考えた」と狙いを明かす。携帯電話サービスの国際的な業界団体GSMアソシエーション(GSMA)でも詳細技術を開示し、採用を積極的に働きかけている。スマホを始めとする対応機器の開発も同時に促す。

ドコモがここまでポータブルSIMに力を入れる理由は、2013年度末の携帯電話契約数が1億4413万件となり、人口普及率でみれば113.4%に達したことだ。産業として成熟期に入った今、自社回線の利用拡大をどう図るかが最重要の経営課題になっている。同様の悩みは世界の通信事業者も抱えている。

■苦い経験がドコモを駆り立てる

後押ししているのがかつての苦い経験だ。携帯型ゲーム機「プレイステーション・ヴィータ」に第3世代携帯電話(3G)モデルが用意されたことから複数の料金プランをわざわざ用意したが、大半が無線LANモデルを選択してしまい不発だったのだ。いつでもどこでも遊べる利便性は間違いなく3Gモデルに軍配が上がっていたが、通信料の負担増に対する根強い抵抗感は解きほぐせなかった。同じ現象がタブレットでも起きている。Wi-FiモデルとLTEモデルをラインアップするが、Wi-Fiモデルを好んで買っていく消費者ばかりだ。

ポータブルSIMは、ドコモにとって劇薬になる可能性もある。本来2回線契約してくれるかもしれない消費者が1回線で済ますようになれば、契約数でKDDIやソフトバンクに後れを取りかねない。現在携帯電話販売の最前線では、1回線でも多く契約を集めようと、使いもしないデジタルフォトフレームなどを半ば強引に消費者に売りつけてでも回線数増を競う「悪習」が横行しているからだ。

ただ裏返せば、数より質をとる作戦を先んじて行うことでゲームのルールを自らチェンジできる可能性も秘めている。契約する回線数は増えなくてもいい。LTE回線の利用機会を増やせれば長期的にみてパケット収入の増加につながるからいいではないか――。ポータブルSIMにこんな思いを込めている。最大手ドコモの新たな一手が、かつての「iモード」のようなドコモ主導のエコシステムの構築に向けた小さい一歩になるのかもしれない。

能力の高さは誰もが認めており、特定の分野ですばらしい実績を挙げているにも関わらず、表舞台に上がることの少ない“悲運のエース”。パソコン周辺機器の世界にも存在する“悲運のエース”の一つに「昇華型熱転写プリンター」(以下昇華型)がある。
現在のプリンター市場で昇華型は、「インクジェットプリンター」の影に隠れた“忘れられた存在”になっている。しかし記者は、昇華型にはまだまだ復活の可能性があると考えているし、最近テレビCMでもよく耳にする「デジタルカメラで撮った写真をプリントする」市場そのものを活性化する力を秘めていると見ている。この“忘れられかけた存在”のことを、もう一度思い出してみたい。
●写真印刷に向いた昇華型プリンター インクリボン上の固形インクを熱で昇華させ紙に定着する昇華型は、写真印刷に向くプリンターとして、家電量販店・コンビニエンスストア店頭のデジカメ・プリント用キオスク端末や、写真スタジオなど業務用に使われてきた。「インクジェットプリンター」や「レーザープリンター」が色の階調(濃淡)をドットの数で表現するのに対して、昇華型はドット毎に階調を表現できる。そのため昇華型は、スペック上の解像度こそ300dpi程度とインクジェットなどには引けを取るものの、(1)人肌のような細かい階調の描写に優れる、(2)耐光・耐水性など保存性が良い---といった特徴があり、画質自体はインクジェットなどに勝るとも劣らない性能を有すると言われている。
これは何も記者がそう言っているのではない。昇華型の性能の高さは、オリンパス光学工業、キヤノン、ソニー、ニコン、リコーなどの名だたるデジカメ・メーカーが、いずれも「デジカメ用プリンター」として昇華型を採用している事実が裏付けている。
●昇華型の市場はインクジェットの20分の1? しかし、残念ながら昇華型はこれまで“プリンター界”の表舞台に立ってはいなかった。1990年代末までは、昇華型に近い溶解熱転写型方式を採用したアルプス電気の「マイクロドライプリンタ」(オプションで昇華型に変更可能)が家庭用として販売されていた。しかし同社は2000年に家庭用市場から撤退し、直販のみに切り替えた。これで、パソコン用プリンターとしては姿をほぼ消し、昇華型はデジカメ用としてのみ存在するようになった。
ところが、オリンパス光学工業、キヤノン、ソニーといったメーカーが販売するデジカメ用の昇華型といえども、一般ユーザーの目に留まることはほとんどない。新宿の超大型パソコン量販店であればその片隅にポツンと置かれているのを目にできる程度。家庭用プリンターといえばインクジェットというのがほぼ“常識”と言える。事実、電子情報技術産業協会(JEITA)の調査によれば2001年度における国内インクジェット・プリンター市場規模は1800億円。昇華型プリンター・メーカーへの取材によると、デジカメ用昇華型の市場規模は多くても100億円程度(消耗品込み)と、かなりの差がある。
90年代中頃までは画質の点でインクジェットを上回っていた昇華型が、パソコン用プリンターとしての地位をインクジェットに追われた理由は何か。そして現在、デジカメ用の昇華型がインクジェットの牙城に食い込めないのはなぜだろうか。
インクジェットの利点は汎用性の高さだ。“年賀状用プリンター”として普及した側面が強いインクジェットだが、高画質のカラー画像印刷から、モノクロでの高速文書印刷まで守備範囲が広い。昇華型は画像の印刷では高い性能を発揮するものの、文書印刷にはスピードや画質面で難があり、パソコン用プリンターとして1台目として使うには物足りない。
しかも現在のインクジェット・プリンターは安い。2万?3万円程度のものでも、DPE店でプリントした写真に迫る“写真画質”で、ハガキやLサイズ、B5、A4の用紙に“4辺フチ無し”で印刷できる。対するデジカメ用昇華型は、インクジェットと同等かやや高めの価格帯(2万?6万円程度)なのに、印刷できるのはカードサイズや大きくてハガキサイズの用紙に留まる。A4サイズ対応昇華型としてオリンパス光学工業の「CAMEDIA P-400」があるが、価格は12万8000円(店頭価格は4万9800円)と高額だ。
これら昇華型はメモリカード・スロットを備えるためパソコン無しで写真を印刷できるというメリットがあるものの、一般ユーザーがインクジェットの代わりに選択する可能性は現時点では非常に低いだろう。
では今後は、インクジェット・プリンターだけになるのだろうか? 実は記者もインクジェット機のヘビーユーザーであり、その性能を高く評価する一人だが、そうとは考えていない。注目しているのはデジカメ購買層の変化だ。
●“デジカメ・プリント”のブレイクはこれから そもそもデジカメで撮影した写真を印刷する行為、 “デジカメ・プリント”のブレイクは、まだこれからと見る企業は多い。記者が取材した企業だけでも、2002年10月からキオスク端末を使ったデジカメ・プリントサービスを本格展開するオムロンや、感熱紙を使用する写真プリンターの新製品「Printpix CX-400」を発売した富士フイルム、オリンパス光学工業などが、デジカメ・プリント市場は2003年までに現在の約3倍という300億円程度に拡大すると見ている。
理由はこうだ。これまでのデジカメ購買層は、20代?40代の男性などパソコン・マニアが中心であり、あくまでもパソコン周辺機器としてデジカメを購入していた。それに対して、銀塩写真の“ヘビーユーザー”である主婦層や高齢者層にデジカメが浸透し始めたのはつい最近のこと。そして主婦層や高齢者層は、デジカメ画像をパソコンに取り込んで、ディスプレイで見るなどという面倒なことはしない。パソコンを介さずにプリントできるのなら、プリントして見ることを好むのだとデジカメ・プリントに関わる各社は分析する。
またこれからは、主婦層や高齢者層を中心に、“パソコンを持たないデジカメ・ユーザー”が増えるのではないかと考えている。デジカメの「結果をすぐ確認できる」「撮り直しができる」というメリットは、そもそもパソコンを持たないユーザーにとっても魅力的だ。また、これまでの写真(銀塩写真)でも、一般ユーザーが大事にしているのはプリントであり、「気に入ったデータだけプリントして保存すれば、あとのデータは消しても構わない」と考えるデジカメ・ユーザーが増えてもおかしくないと、記者は考えている。
そうしたパソコンを持たないユーザーに必要なのは本当にインクジェットだろうか。確かにインクジェットの中にはメモリカード・スロットを搭載する機種もあるが、パソコンを持たないユーザーがそれだけを目的に、大きなA4対応のインクジェット機を購入するのには、若干の疑問を感じてしまう。このような点を考慮すると、特にパソコンを持たない層にとって、専用用紙と専用インクリボンのセットを購入すればパソコン要らずで写真印刷ができる小型の「デジカメ用昇華型プリンター」は、価格の問題を除けば、非常に魅力的な商品に見えてくる。
もちろん、価格は非常に大きな問題だ。現在大型量販店などで販売されているデジカメ用昇華型は、Lサイズの半分のカードサイズを印刷できる製品で2万?2万5000円程度、Lサイズ対応だと3万円からという価格帯。メモリーカード・スロットを搭載するインクジェットは2万円台で販売されていることを考えると、割高な印象を受ける。
●1万円台の昇華型プリンターが登場 実は、従来にない低価格なデジカメ用昇華型が既に登場している。業務用昇華型プリンター・メーカー大手の神鋼電機が2002年3月に発表した「カラーペット」(写真左)がそれだ。Lサイズ(89mm×127mm)より少し小さいEサイズ(82.5mm×117mm)の印刷専用だが、価格は1万9800円で、同社子会社による直販価格は1万7800円(25枚分のペーパーとインクリボン込み)である。印刷解像度は306dpi。プリントエンジンは、コダック、オムロン、トヨタ自動車のプリント・キオスク端末に同社がOEM供給している業務用のものがベースで、印刷速度を除き性能は同じという。
ランニングコストは用紙・インク合わせて1枚55円と、インクジェット機と比較すると高い。またカラーペットはPCカードスロットしか搭載しないため、ユーザーがPCカードのメモリカード・アダプタを別途用意する必要があり、価格のメリットもやや小さくなる。業務用と同じ画質の昇華型プリンターが2万円以下で入手できるインパクトは大きいが、市場の起爆剤になるにはやや力不足ではある。
そもそも、3万?4万円も出せば200万?300万画素のCCDを搭載するデジカメが購入できる現在である。周辺機器であるデジカメ用プリンターの価格は1万円程度が妥当ではないだろうか。しかし、もしカラーペットのようなデジカメ用昇華型が1万円程度になれば、わずか5万円で写真店いらずの「ホームDPE」が構築可能になる。さらに、デジカメとセットで安く購入できればパソコンを持たないユーザーは飛びつくことは間違いない---これが、記者が考える昇華型プリンター完全復活へのシナリオである。(中田 敦=BizTech編集)
■関連情報
・エプソン販売のWebサイト http://www.i-love-epson.co.jp/
・キヤノンのWebサイト http://canon.jp/
・神鋼電機のWebサイト http://www.shinko-elec.co.jp/

2014-07-10_212535_2 井原線の橋梁は269か所あるが、架道橋・高架橋が230か所、いわゆる橋梁が39か所である。もっとも長いのは清音・川辺宿駅間
の「高梁川橋梁」716.3m、ついで荏原・井原駅間の「小田川橋梁」350mである。
「高梁川橋梁」は新技術を用いた特徴ある橋梁で、3つの特徴が認められて、平成5年度の「土木学会技術賞奨励賞」に選定された。

日本中でもたいへん珍しい特徴を持つ「高梁川橋梁」長さ716m、8径間のトラス橋。
特徴の1 カーブをしながら橋梁にかかり、途中直線区間を経て、再度カーブをしながら高梁川を渡りきる。
清音駅を出た列車は急カーブ(R=400)で堤防に到達した時には、まだ川に直角になるまでには曲がり切れずにカーブしたまま曲率半径R=600で橋梁にかかる。中間の直線部分を経て、再びR=600で右カーブして渡り切る。その2014-07-10_211905_2あとは一直線に稲田を二つに割って勾配を下り、川辺宿駅に到達する。R=400は井原線の中で最急のカーブである。通常橋は川に直角になる様ににかけられるものであり、ここは全国でも珍しいカーブ鉄橋なのである。しかもその度合2014-07-10_212555_2いはかなり急である。平成5年度の土木学会技術賞奨励賞に選定されている。
特徴の2 橋梁上は716mの全線ロングレールで、民鉄・第3セクター路線では珍しい。
清音駅を外れるまでの複雑な分岐を通過するガタンガタンというレール音が、規則的な通過音に変わって33
パーミルの勾配を上る。登りきったところでこの規則的な通過音はなくなり、新幹線に乗っているようなシャーという音で軽快に川の上を走る。清流を目下に見ながら西側の堤防を越えると再び規則的なレール音に戻る。敷設時には橋上で溶接したという。堤防を上る時の勾配33パーミルは井原線内で最大の勾配である。ケーブルカーを除いては日本でも最大である。かつて山陽本線で3重連の蒸気機関車が牽引した広島県の瀬野・三本松駅間でさえも25パーミルであった。
特徴の3 構造材料が全部無塗装耐候性の鋼材で、一見錆びているかに見えるがそうではない。
橋桁用鋼材は、耐候性鋼材と称する材料を用いて無塗装で使用されている。これは鋼の表面に保護性の錆(安定錆ともいう)を形成するように設計製作された合金鋼で、防錆塗装をしなくても錆が進行しない。表面層は緻密で内部まで腐食されず、色は茶褐色で美しいが、それと知らない人には普通の錆と誤解されるおそれもある。それを避けるためにあえて塗装されることもあるが、ここは無塗装で使用している。更に鋼材の素原料も電炉鋼材(スクラップ鉄を用いて電気炉で溶解して作る。高炉鋼材と対比した言葉)を主部材にも使用している。

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